HAPPY! (5)
HAPPY!

 お母さんの方はというと、くすっと軽く笑って、

「ああ、そういうこと。いいぞ、おいで、クレフ」

 お母さんが両手を広げてくれたので、クレフは、わーいと言って、駆け寄った。
 お母さんにぎゅっとされて、クレフはすごくうれしくなった。うれしいとは、違う何かがあったのだが、それはクレフにはわからなかった。

「おにーちゃんも、してもらったら?」

 本を読んでいるお兄ちゃんに声をかけると、お兄ちゃんは、目を見開いてこっちを見た。

「な、なにいうんだよ。おれはべつにいい」
「遠慮してるのか? 気にしなくてもいいぞ。おいで、カイン」

 お母さんに優しい声をかけられたからか、ゆっくりお兄ちゃんは立ち上がると、お母さんの側に歩み寄った。

「…おかあさん…」
「どうかしたのか?」

 お兄ちゃんを抱きかかえたまま、お母さんがたずねる。

「ううん、なんでもない、うれしいなぁとおもって。あと、しあわせだなともおもった」
「そうか。それならよかった…」

 お母さんがお兄ちゃんの頭をゆっくり撫でている間、お兄ちゃんはとてもうれしそうな顔をしていた。

「ありがとう、おかあさん」

 と、お兄ちゃんは言うと、お母さんから離れて、お父さんの方を向いた。

「おとうさんも、してもらえば」
「はぁ?」

 お兄ちゃんの言葉が思いもよらなかったのか、お父さんはとんでもない声を上げた。

「いいじゃん、してもらえば。してもらいたいくせに」

 お兄ちゃんがちょっと偉そうに、お父さんの方を見ながら言った。
 お父さんは、くすっと笑うと、あとでしてもらうからいい、と呟いた。

「やらしーなー、もう。そんなかおすんなよ」

 お父さんがちらりと、お兄ちゃんを見やる。一瞬、火花が散ったように思ったのはクレフだけだったのだろうか?

「子供はお休みの時間だぞ」
「はいはい、じゃましないように、ぼくたちはねますよ、いくぞ、クレフ」
「はーい、おやすみなさい、おとーさん、おかーさん」



「おにーちゃんは、おとーさんのこと、きらいなの?」

 ベッドに潜りながら、クレフはお兄ちゃんにたずねた。

「そんなことない。ちょっと、はらたつこともあるけど」
「どうして?」
「なんで、はらたつのかはわかんないけど。でも、きらいじゃない、おとうさんのこと。すこい人だし」
「そうだよねぇ、すごい人だよねぇ。おとうさんみたいになるんだ、ボク」
「あんな人みたいになんの? やめとけば」

 お兄ちゃんは、吐き捨てるように言うと、クレフの隣に潜り込んだ。

「なんで、なんで、すごい人なんだよ。それに、おかーさんがすきな人なんだよ」

 お兄ちゃんが驚いて、布団から顔を出す。お兄ちゃんと目があったクレフはにっこり笑った。

「おかーさんがすきな人になりたいなぁ、っておもわない?」
「…それは、おもう…」

 お兄ちゃんは、小さい声でそう言うと、また、掛け布団を大きくかぶって、さっさと眠ってしまった。
 クレフは、電気を消すと、布団に潜り込んだ。



  その後、クレフは久しぶりに夢を見た。
  家族全員で、旅行している夢。
  仲良く、みんなで笑っている。

  ああ、こういうのが、しあわせなのか、と思った。


END
セフィクラ家族の何気ない一日を書いてみたわけですが、いかがでしたでしょうか?
父、母、子供たちは毎日こんな感じで暮らしているようです。
(書き直したものの、あまり変わってないなぁ……。)
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