HAPPY! (1)
HAPPY!

 クレフが目を覚ました時、お兄ちゃんはまだ眠っていた。いつもはお兄ちゃんの方が先に目を覚ましているのに、今日は自分の方が早かったので、何だか嬉しい。
 ベッドからそっと抜け出すと、階下のキッチンへと向かった。普段なら、みんな既に起きていて、キッチンやリビングにいたりするのだが、今日は誰もいない。
 クレフ一人だけが、その空間に立っていた。
 初めての感覚に喜びを感じる反面、怖さも感じた。ここには自分しかいないのではないだろうかという怖さ。
 落ち着かなくなって、一人でうろうろしていると、後ろから声がした。

「今日は早いんだな。いつもは最後なのに」
「おかーさん!」

 声の主の方に振り返る。

「ん? どうかしたのか?」

 自分と同じ金髪で、自分をそのまま大きくしたような姿をした人。自分は大きくなったらこうなるのだろうな、と思わせる。

「お、おはようございます!」

 お母さんは、クレフの挨拶を聞くと、にっこり笑ってクレフの目線までしゃがみ、頭を撫でてくれた。

「はい。おはよう。悪いけど、新聞取ってきてくるか?」

 クレフは大きくうなずくと、庭に駆け出した。
 少しして戻ってくると、階段のところにもう一人、起きてきた人を見つけた。

「おはようございます、おとーさん!」

 階段にいたお父さんは、クレフに気付くと、少し微笑んだ。

「ああ、おはよう。今日は早いな」
「これ、しんぶん!」

 クレフは父に駆け寄ると、新聞を差し出した。

「ありがとう。ご苦労だったな。さ、朝ご飯だ」

 父は、新聞を受け取ると、さっさとキッチンの方に行ってしまった。その後をクレフが追う。
 クレフが後を追ってキッチンに入ったときには、お父さんがお母さんを後ろからぎゅっとしているのが見えた。

「おはよう、クラウド」

 お父さんが、お母さんの名前を呼んでいる横をすり抜けて、クレフはリビングに向かった。

「あ、おはよう、セフィロス」

 と、お父さんに言葉を返すお母さんの声は何だか嬉しそうに聞こえた。
 リビングの方から、キッチンにいるお父さんと、お母さんの方にちらっと目をやると、チューをしているのが見える。
 そういえば、お兄ちゃんが、お父さんとお母さんは、おはようとおやすみのチューをしていると、言っていたのをクレフは思い出した。
 何だか恥ずかしくなって、目を反らした時、階段を降りてくる音がした。その後、おはようございます、という声がキッチンの方から聞こえてきた。
 お兄ちゃんが、起きてきたのだ。
 お父さんと、お母さんが、口々におはよう、と挨拶している。

「あ、クレフ、きょうはオレより、はやかったんだ」

 自分の後ろから、声が聞こえたクレフは、勢いよく振り返った。
 リビングにやってきたお兄ちゃんが、意外そうな顔をして立っていた。肩まで伸ばしたお父さんと同じ銀髪が朝の光に鈍く光っている。顔もお父さんそっくりだ。

「うん、きょうはボクのほうがはやかったね」
「オレ、きのうねたのおそかったからなぁ。バグがぜんぜんとれなかったから」

 お兄ちゃんは、どうやら何か難しいことをしているらしい。クレフは一回尋ねてみたが、難しすぎて、ぷろぐらむ、という言葉しか覚えていない。

「どうしても、とれないんだよなぁ…」
「むずかしいことしてるんだぁ」

 クレフは頭を横に振った。自分にはわからない事だと思ったからだ。
 その時、不意に頭をなでられたので、上を見上げてみた。
 お父さんが、少し笑っていた。

「ああ、クレフには難しいか。カインは、こういうのが得意だからな。みてやろうか?」

 名前をよばれたお兄ちゃんが、お父さんを見上げている。お兄ちゃんは楽しくなさそうな顔をしていて、お父さんが好きではないように思えた。

「おとうさんに、みてもらうほどのものでもないとおもうんだけど。でも、みてもらうよ。ごはんたべたら」

 お兄ちゃんは、そのままキッチンに戻って行ってしまった。
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