HAPPY! (3)
HAPPY!

「おにーちゃん、おとーさんがどうかしたの?」
「どうもしない」

 ボールをつきながら、お兄ちゃんはめんどくさそうに答えた。

「え、でも、おかーさん…」
「ああ。おかあさんはおとうさんといっしょにいたいんだろ」
「いつもいっしょにいるのに?」

 お兄ちゃんが急に笑いだしたので、クレフには何が何だか、わからなかった。

「そんな、めをまん丸にしてきくようなことかよ」
「だって、だって、いつもいっしょにいるもん」
「いつもいっしょにいても、それでもいっしょにいたいんだろ」
「じゃぁ、ずーっと、いっしょにいたらいいのにね」
「ばーか。そうなったら、いっしょにあそんでもらえなくなるんだぞ」
「あ、そーかぁ。それは、いやだ……」

 クレフは何だか、すごく哀しくなった。同じ家にいるのに、遊んでもらえない。同じ家にいて、いつもいっしょにいるような気がしていたけれど、それは違う。いつもいっしょにいるわけではないのだ。

「あー、もう、なくなよ。たとえばなしだろ」
「だって、おかーさん…」
「だいじょうぶだって。そんなことでしんぱいするなよ。さぁ、そろそろいえに入ろう」

 クレフはお兄ちゃんに手を引かれて、そのまま家に入っていった。
 二階の部屋に上がるときに、ちょっとリビングを覗いて見ると、お父さんとお母さんが並んで座っていた。
 お母さんの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
 少しすると、お父さんがお母さんの腕を掴んで自分の方に引っ張ると、力いっぱいぎゅっとしていた。
 こちらからは、お母さんの表情はわからないけれど、お父さんのほうはなんだか、うれしそうに見えた。

「おとうさん、うれしそうだねー」

 横にいるお兄ちゃんにそっと声をかけてみた。
 お兄ちゃんは、ちょっと、ムスっとした顔をしながら、こう言った。

「そりゃ、うれしいだろ。おかあさん、ひとりじめしてるんだからな」

 その場にいるのが嫌かのように足を進めるお兄ちゃんの袖を、クレフは引っ張った。

「なにするんだよ! クレフだって、ひとりじめされるのいやなんだろ!」

 振り払われた手をゆっくり下ろしながら、クレフはお兄ちゃんの顔を見つめた。

「でもね、でもね。おにいちゃんはおこってるけどね、おかあさんはね、うれしいとおもう…」
「…そんなことは、わかって……」

 お兄ちゃんが急に目を見開いて遠くを見るので、クレフは慌てて振り返った。
 後ろには、心配そうにお兄ちゃんを見ているお母さんがいた。

「どうかしたのか、大きな声出して…」
「…なんでもないよ…。ばんごはんまでへやにいるよ…」

 お兄ちゃんはこう言うと、さっさと、二階の部屋に行ってしまった。
 お母さんは心配そうな顔をしたまま、お父さんの方を伺っている。
 お父さんは、首を横に振って、ほっといてやれ、と言った。

「でも、カイン…」
「俺がカインの立場なら、ほっといて欲しいと思うがな」
「…でも、やっぱり…」

 お母さんが二階のお兄ちゃんの部屋へ行こうとするのを、お父さんが名前を呼んで止めた。

「クラウドが行くほうがカインにとっては、残酷だぞ」
「残酷…?」
「そう、クラウドが来たら嬉しいとは思うが、その反面、憎らしいのだと思う。だから、両方に挟まれて自分の気持ちに整理がつかない。嬉しいともいえず、憎らしいから嫌いだとも言えず。それは、カインにとっては残酷なことだろう?」
「憎らしいって、俺のこと嫌いなのかな、カインは…」
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