All I need (4)
All I need

 新しいバイクに少し心惹かれたのは内緒にして、クラウドはセフィロスこそ、と、一般とはちょっとずれた事を口にした男の頬をつねった。

「アンタさ、自分のものさしだけで、世の中測りすぎだよ」
「そうか。プールとかイイと思ったんだがなぁ」
「夏しか使えないものはいらないだろ」
「庭に作るとは言ったが、屋外とは言ってないぞ」
「ちょ…、それがおかしいって言ってんの!」

 屋外とは言ってないということは、全天候型を作るつもりだったのだろう。
 年がら年中プールに入れるのは、身体を鍛えているものとしてありがたいけれど、家計を預かってる身としては、光熱費の事を考えてしまう。

「…せっかく、クラウドの裸が見れると思ったのに…」

 ふぅ、と残念そうに溜め息をつくセフィロスの頭をクラウドは軽くはたいてから、毒づく。

「…見飽きてるくせに。それにプールには裸で入りません」

 クラウドが立ち上がったところで、手を掴まれた。

「こら。話がずれたままだ」
「…ずらしたのはセフィロスだろう?」

 手を離してくれそうにない、と気づいたクラウドはもう一度ソファーに座った。

「本当に欲しい物、ないのか」
「…ないよ。あるとしたら一つだけだからな」
「なんだ、あるんじゃないか」

 セフィロスの少し落ち着いたような表情を見て、クラウドは小さく溜め息をついた。
 セフィロスがプレゼントして祝ってやろうと思ってくれているのはよくわかるけれど、別にそのとき欲しい物をくれなくってもいい。目に見えてわかるものが欲しいというものでもない。

「…先に言っておくけど、セフィロスからもらえるんだったら、飴の一つでも大喜びだよ。そういうことも忘れてるんだな」
「そうは言っても…」

 セフィロスは掴んでいたクラウドの手を放して、目を伏せた。
 そんなセフィロスと目を合わせるようにクラウドはセフィロスの頬を両手で挟んで、自分の方を向かせた。

「どうしても、俺の欲しい物を用意したいみたいだけれど、俺が欲しいたった一つの物は、セフィロスでは絶対買えないからな」
「…どういう意味だ…? 金額の問題じゃないってことか?」
「そうだな。お金を積めば済むとかそう言う話じゃない。これでもわからない?」
「…全く。触れられる物なのか、仮想のものなのかも」

 セフィロスは肩を竦めてから、降参といった風に両手を挙げた。
 勘が人一倍鋭いにもかかわらず、自分のことになると、めっきり勘が鈍ってしまうものだな、とクラウドは思わず笑ってしまった。

「笑うところか?」
「ごめん、ごめん、しょうがないからさ、もう一つヒント。俺は毎年同じ事を言ってるし、誕生日以外でも言ってる。聞き飽きたようなセリフをここで言おうか?」

 じっとクラウドの顔を見つめたままだったセフィロスが急に抱きしめてきた。

「聞き飽きてなどいない。聞かせてくれ…」
「…俺が欲しいのはセフィロスだけだよ、この先もずっと…」

 セフィロスの背中に腕を回して、しっかり抱きつくと、さらに強く抱きしめられる。

「だからさ、もう、欲しい物はないんだよ」
「…こんな俺でいいなら、いくらでもくれてやる…」
「こんな、じゃなくて、このセフィロスがいいんだって……っ、ちょ…、こらこら!」

 クラウドはいきなり首筋に吸い付いてきたセフィロスの背中をバンバン叩いて拘束から逃れると、慌ててソファーから立ち上がった。
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