All I need (3)
All I need

「何を?」
「この世で唯一無二の存在。誰もがうらやむほど綺麗で、それでいて強い。かつては英雄として崇められ、誰も近づけなかった。それでも、側にいたいと思っていた人は五万といて、俺もその中の一人だった」

 セフィロスはセフィロス自身のもつ容姿や秀でた戦闘能力などにより、憧れるものも多く、それとは逆に酷く嫉妬するものもいた。
 どちらかと言えば、憧れ、尊敬、それ以上に深い愛情を持って接し、セフィロスの愛情を貰うために躍起になっているものの方が多かった。

「そんな俺が、こうやってセフィロスを手に入れて、セフィロスの側にいられるんだよ。これ以上、欲しい物なんてないし、言えないだろ?」
「なるほど。クラウドの言い分は理解した」

 セフィロスはテーブルに手を伸ばし、ロックグラスを掴むと、少し入っていた洋酒を飲み干した。グラスを置いたその手で、束ねていた髪を解く。
 長い絹糸のような髪が黒いソファーの上に広がり、部屋の電気に照らされて煌めいた。
 その眩しさに目を細めつつ、クラウドは、何が言いたい、と尋ねた。

「クラウドと俺では考え方が違うようだ」
「違う?」
「そうだ。俺がクラウドを選んだと思っているようだが、俺からしてみれば、クラウドに選んでもらったんだ」
「はぁ?」

 予想もしていなかった返答にクラウドは裏返った声を出してしまった。
 クラウドからしてみれば、数え切れないセフィロス信者の中から自分を選んでもらったわけで、決して、セフィロスを選んだというわけではない。セフィロスがいい、側にいたい、と強く願っていたのは事実だけれど、それは選んだのとは違う。

「セフィロス、おかしくない?」

 クラウドの言葉にセフィロスは嫌そうな顔をした。
 いつも自分の論が正しいと信じて相手を簡単に言い負かし、反論を許さない人だから、おかしい、と言われるのは大変心外なのだろう。

「どこが?」

 声のトーンが下がっている。密かに怒っているようだ。たまにしか逢わない人にはわからない程度の下がり具合。長年一緒に暮らしているクラウドだから、感じたことだ。

「だって、俺が選んだわけじゃない。俺はそんなに偉い立場にいなかった」
「立場の問題じゃない。クラウドがいいと言った俺に対して、クラウドが拒否したとしたら、そこで終わりなわけだ。つまり、クラウドに選ばれなかったという事実が残るんだぞ」
「…んー、んー」

 クラウドは頭をフル回転させて考えてみた。
 セフィロスは自分から見てとても高い地位の人で、自分の方が下だとずっと認識していた。だからこそ、選択の権利はないと思っていた。
 それが、セフィロスの考えではまるっきり逆になっているようなのだ。
 セフィロスが選んだのは自分で、自分が選んだのはセフィロスで。

「選んだとか選んでないとか考えるのがおかしいのか…、ああ、もう、ややこしい!」

 とにかく、とクラウドはセフィロスの肩を掴んだ。

「俺はセフィロスの側に一緒にいられるだけで、本当に十分なんだよ。だから、これ以上は望んでない。欲しい物がない」
「ややこしくしたのはクラウドのくせに、勝手に結論づけたな。じゃあ、こうしよう、俺は人だから、物扱いから外してもらうとして、それ以外に欲しい物を言え」
「だからさ、無いんだってば!」
「そうか? よく考えろ。新しい家とか、新しいバイクとか、ほら、庭にプールとか…」

 セフィロスが提案してくるものが一般とはかけ離れすぎていて、返す言葉が見つからない。
 既に今住んでる家も快適に暮らせているし、プールなんかは神羅のジムに行けば済む話なのだ。
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