cry for the moon (3)
cry for the moon

 兵士は何かに思い至ったのか、急に俺の周りを回り出した。

「何だ…?」
「ああ、やっぱり!」

 兵士は大変失礼いたしましたと、またも深々と頭を下げた。

「…いや、失礼なのはむしろ俺の方だと…」
「セフィロスさんだとは気づいておりませんでした、申し訳ありませんでした!」
「謝ることはない。別に俺は失礼なことをされたとは思っていないのだから」

 兵士は頭を下げたまま、動かない。
 ヘルメットをぽんぽんと叩いて、いいから、となだめてやると、ようやく頭を起こした。

「…本当にどうお詫びしたらいいのか…」
「お詫びされるようなことはしてないからいい。俺がおもしろがったのも問題だからな」
「おもしろい…?」
「俺の剣の早さについてこれるやつはそうそういなくてな。稽古の相手がいなければ、俺を呼ぶといい」
「お、恐れ多い…ことです…! とんでもありません!」

 兵士は手を胸の辺りで大きく振りながら、後ずさる。

「では、俺が呼べば問題ないな。名前を聞いておこうか」
「…あ、あの、俺みたいな一般兵の兵士よりも、ソルジャーの方々のほうが…」
「慣れてしまってな、おもしろくないんだ。俺はお前とやるほうがおもしろい…」
「…クラウドです。クラウド・ストライフ…です」

 兵士はそう言いながら、ヘルメットを脱いだ。
 その顔を見た途端、俺の呼吸が止まりそうになる。
 まるで心臓が鷲掴みされたよう。
 月の光を浴びて眩く光る金色の髪の毛。
 透き通るほどの肌の白さに、まるで紅を塗ったかのような赤い頬。
 男に使うのは間違ってるのはわかっているが。

「色っぽい」

 そう思った。

「…も、もし、そのような光栄な機会があるようでしたら…」

 どこか遠くの方でその声を聞いているようだった。
 気づいたときには、兵士の姿は闇に消えてしまっていた。

「まさかな、この俺にこんな思いがあったなんてな」

 自分の中に沸き上がってきた感情に俺自身が驚いている。
 苦笑しながら、俺は兵士が消えていったであろう方向とは反対向きに歩き出した。

「欲しい、なんて感情、とっくに捨ててたと思ったが…。さて、どうやって、近づこうか?」

 嫌だと思っていた訓練も楽しくなりそうで、高揚感が半端ない。こみ上げてくる楽しさに、顔に笑みが浮かぶのを押さえきれずにいる。
 歩みを止めて、一度空を仰ぎ見た。
 月が俺を照らしていた。

「ないものねだりと、笑うか? いや、手に入れてみせるさ、今回ばかりは。だから、味方しろ」

 けしかけるように呟いて、月が照らす道を歩いた。


 訓練室であの金髪のか弱い兵士と遭遇したのは、数日後のことだった。


END
お付き合いありがとうございました!
初めて見かけたのがこういうのもいいなぁ、って思って、勢いで書きました。
最後の最後が決まらなくて、アップするのは遅れましたが…。
皆様のイメージとはかけ離れてるかも知れませんけども、個人的には満足です。
きゅんきゅんしながら生活してるセフィロスはきっと可愛いよ、うん。

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