cry for the moon (2)
cry for the moon

「終わりだな」

 喉元に刃の先を当てて、小さく笑う。
 兵士は頭を上げて、俺を見ているようだった。

「…どうぞ、ご自由に」

 なぜだろう、急に怖いほどの覚悟が伝わってきた。
 この華奢な兵士の中に何があるのだろう。余計に興味が沸いた。

「…悪かった。俺の意地悪が過ぎたようだな」
「意地悪?」
「足下が悪い方にわざと追い込んだ」

 舗装の上手くいっていない場所がわかっていた俺はそちらに向かって進んでいたのだ。
 兵士は頭を振って、いいえ、とはっきり言った。

「そこまで読めない俺が未熟だったのです。ですから、俺が悪いのです」

 俺はそっと手を伸ばした。

「あの…?」
「ほら。立ち上がれるか?」

 兵士が首を振ったので、俺はやりすぎたか、と兵士の側にしゃがもうとした。
 それを静止するように、兵士の手が上がる。

「ひ、一人で立てます…」

 兵士はゆっくりと立ち上がって、ズボンをパンパンとはたいた。

「受けてるばかりではなくて、ちゃんと攻撃にも転じられるように鍛えた方がいい」
「…ありがとうございます…」

 兵士は俺に深々と頭を下げた。
 それと同時に、いたっ、と小さい声が聞こえた。

「怪我を…?」
「い、いえ…。何でもありません…」

 とっさに兵士が手を後ろにやるのを見逃さなかった俺は、腕を掴んで手のひらを広げさせた。
 手はあまりに細くて、俺が力を込めたら、ぼろぼろに崩れてしまいそうだった。

「あ、あの、一体…」

 手袋をしていたためわからなかったが、多分、マメが何カ所か潰れているのだろう。

「……」

 簡単に魔法をかけてやり、腕を放してやった。
 兵士は不思議そうに手を握ったり開いたりしている。

「…剣の腕が素晴らしくて、魔法も使えるなんて…、もしかして…」
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