2016 Xmas (2)
2016 Xmas
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 新しいパターンに俺の思考がついていかなかった。

「だからー、俺のことをー」

 目は据わったままだから、きっと酔っ払ってるのだろう。今晩、このまま寝たら忘れてそうだし、忘れられるなら言うのも癪だ。

「そう言うクラウドは? 俺の事をどう思ってる?」
「…う…っ」

 困って、本当にうっ、って口に出すとは、なかなか珍しい奴だ。

「さあ、クラウドが答えたら、答えてやってもいい」
「質問に答えずに、質問を返してくるのはー、ひきょーだ……ぞー……」

 クラウドは急にバタンと前に突っ伏した。もっと説教が続くかと思っていたが、案外短く済んだ。普段なら、事細かなお小言が続き、食事をちゃんと取れと言うクラウドと特に食事は必要ないという俺の攻防が始まると、なかなか終わらないんだが、地蔵化するのも思ったより早かった。
 俺はそっと席から立ち上がり、クラウドの側に立つ。

「ほら、クラウド」

 クラウドの肩を揺すってみたが、うー、と唸るしかしない。起き上がらせても、気持ち悪くなる可能性もある。クラウドを座らせたまま椅子を引き、机との距離を開けると、そっと横抱きで抱え上げた。

「…セフィ…ロスー」
「どうした? 寝室まで運んでやるから、もう、寝ろ」
「…やだ、答え……聞いてない…」
「俺も答えを聞いてないから、お互い様だろう?」
「…ずるい…、そうやって、いつもごまかす……」

 クラウドはそのまま黙ってしまい、目を閉じたまま、動かなかった。なるべく身体と頭が揺れないようにゆっくりと寝室まで運んでやり、静かにベッドに下ろしてやる。クラウドはふーと軽く息を吐き出すと、セフィロス、と俺の名前を呼んだ。

「…ん?」
「…好き…だ…」

 小さな声ではあったけれど、確かに耳に届いてきた。
 強がりを通しきれないクラウドが本当に可愛くて、俺はにやつくのを押さえられなかった。
 目を閉じたままのクラウドの瞼に軽く唇で触れてから、好きだと耳元で囁くと、クラウドは口元をにやりと歪ませた。

「…クラウド、お前……!」
「今、何時?」

 俺の言葉を遮るようにクラウドはしっかりとした言葉で尋ねてくる。

「そうだな…、…あと2時間ほどで、日が変わる」
「じゃ、日が変わったら起こして」

 クラウドは上かけを引っ張って、頭の上まですっぽりと被った。

「…もしかして、その気か…?」
「その気じゃないのか?」
「クラウド次第、だな」

 ちらりと目の下まで上かけを下げたクラウドは俺を睨むように見てきた。

「…だから、起こせ、と言ってるんだけど」
「はいはい、わかりました」

 酔っ払ってなくても、こういう時は逆らわない方がいい。この後全てがお預けになったら、悲しすぎる。

「じゃあ、ゆっくりお休みください」

 そう言って寝室から出ようとした俺をクラウドは呼び止めてきた。
 振り返ると、クラウドは身体を起こしていて、勝ち誇ったように笑みを浮かべてこう言った。

「二時間後、お待ちしております」

 素敵なお誘いに心を鷲掴みにされたまま、俺は寝室を後にした。

 クラウドに本心を言わされたのだけが、ちょっと引っかかるが、まあ、お誘いはクラウドからのクリスマスプレゼントだろうし、それでチャラにするとしよう。


 二時間後に思いを馳せつつ、俺は残っていたディナーを楽しんだ。


END
書こうという気分になったので、がーっと書きました。
クリスマスだから、エロエロしい話にしたかったんですが、まあ、そこはご想像にお任せで。
久しぶりに書けて、楽しかったです♪
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