2016 Xmas (1)
2016 Xmas
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「メリークリスマス!」

 俺とクラウドはグラスを軽く合わせた。
 クリスマスイブということで、配達が忙しかったようだが、何とかこなしきって、夜の8時ぐらいに家に帰ってきた。
 テーブルに並ぶ料理はクラウドのお手製だ。朝、配達に出かける前に仕込んでいたらしく、帰宅してからはそれほど時間もかからず、料理が出そろった。
 
「あー、甘い」

 クラウドは一口飲んで、むむっと困った表情を浮かべている。
 お互いに合わせたグラスの中身は色は似ているが全く異なったものだ。俺は赤ワインだが、クラウドが飲んでいるものはアルコール度数%未満の清涼飲料水だ。先日買い物に行った際に、店の目立つところに並べられていた。
 アルミの袋に包まれているクリスマス時期しかお目見えしない飲み物で、色んなキャラクターが描かれており、種類も豊富だ。その中から、クラウドは某テレビアニメのトナカイのキャラクターが描かれたものを嬉しげに買い物かごに入れていた。
 それが今飲まれているものだ。

「クラウドが買ったんだぞ」
「ちゃんと、飲むよ! いちご味だけどね!」

 チキンを貪りつつ、いちご味のシャンメリーを飲んでは、ちょっと嫌な顔をしている。
 素直なんだろうけれど、少し子供みたいだ。
 とはいえ、夜が更ければ、驚くほどに大人びて、色っぽくなる。それに今日は月に一度のあの日だ。
 
「…あのさ、セフィロス」
「んー?」
「鼻の下、伸びてますけど?」
「…気のせいだろ?」
「それはじゃあ、気のせいということにしておいてもいいけどさ、俺の事見て笑ってるよな?」

 子供が拗ねたような表情を見せて、クラウドはグラスを置いた。手酌で飲む酔っ払いのようにシャンメリーをグラスにがばがばと注いでいる。
 クラウドは本当に酒に弱い。洋酒が少し入ったようなケーキでさえも酔ってしまうぐらいだ。もしかしたら、シャンメリーでも酔い始めているのかも知れない。
 俺は少し身構えて、笑ってない、と答えた。

「そうーかー?」

 少しばかり目が据わっている気がしないでもない。
 クラウドは酔うと、数種類のタイプに分かれる。可愛らしくベッドへお誘いしてくれる場合もあれば、強引にお誘いされ、場所は問わない場合もある。そうかと思えば、じーっと黙って地蔵化することもあるし、陽気に絡んでくることもある。はたまた、説教モードに突入することもある。
 今回は説教モードになりそうな予感がする。
 折角の月に一度のラブリーデーなのに、台無しになるじゃないか。
 ちなみにラブリーデーとはエアリスが言い出したことで、クラウドが月に一度女性の身体になる日だ。色々あって、月に一度だけ、本当に全てが女性の身体になる。
 今晩、日付が変わった時点でその身体になるわけで、その身体を抱ける素敵な夜だというのに!

「なんか、にやにやしてる気がするんだよなぁ…」
「にやにやじゃなくて、嬉しくて笑ってる。クラウドが近くにいて、美味しそうにご飯食べてるのを見られるなんて幸せで嬉しくもなるだろう?」

 クラウドは、ふーん、と言うと、グラスに入ったシャンメリーを飲み干し、また、だばだばと注いでいる。

「あー、無くなった…」

 それだけ勢いよく飲んでれば、そりゃ、無くなるだろう。
 イチゴ味でちょっと口に合わないような顔をしていたのに、途中で味が気に入ったのか、酔っ払って、水同然で飲んでいるのか。

「…それぐらいにしておけ」
「じゃ、セフィロスのをー、ちょーだーい」

 本格的に目が据わりだした。ろれつも上手く回ってないようだ。逆らうのは怖いが、はい、どうぞ、と言える状況ではない。

「それは無理な話だな」

 本当の酒を飲ませてみろ。後がどれだけ大変なことになるか!

「あのさー、アンタは、ダメダメ言い過ぎるんだよー」

 ダメダメ言うのは、クラウドの方だ。特にベッドの中では言いっぱなしじゃないか。
 それを直接言うと、血を見ることになりそうだったので、はぐらかすことにした。

「……そう…か…?」
「そうだよ!」

 机をダンと叩いて、立ち上がったクラウドの目はしっかり据わっていた。
 説教モード突入だと覚悟して、すいませんでした、としんみり謝ると、大きく息を吐き出してクラウドはまた椅子に座った。

「それからな、セフィロス!」

 安堵の息をついた瞬間、クラウドはたたみかけてくるように言葉を続ける。
 まだ、何があるというのか。
 飲み過ぎの注意だったら、まあ、わからないでもないから、素直に謝ることも出来るが、全く予測がつかない。

「…本当は俺のことをどう思ってるんだ?」
「は?」
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