pleasure (2)
pleasure

「何? どうかしたのか?」

 セフィロスは無言のまま、冷蔵庫の扉を閉じようとするので、よくわからないけど、冷蔵庫の扉を閉めた。

「つまみないまま、飲むってこと? 別に酔わないだろうからいいけど……、セフィ…ロス…?」

 急に後ろから抱きしめられて、息が止まりそうになる。
 この人が至近距離にいると、鼓動が早くなって、くらくらするのは、いつまでたっても治らない。
 抱きしめられるのももう、数え切れないほどだろうし、こんなに近くにいることなんて、それこそ、もう、数えるのがイヤになるだろうぐらいの回数だ。
 それにも関わらず、俺は毎回、呼吸ができなくなってしまう。

「…クラウドがいい…」
「な…、何の話?」
「…酒の肴…」
「…はあ!? 何、わけわかんないこと……、あ…っ」

 首筋に舌を這わされて、思わず息が漏れてしまう。

「正直な今の気持ちだが?」
「…そのお気持ちには答えかねますね。子供たちがご飯を待ってます」

 セフィロスの手をぴしゃっとはたいて、拘束から逃れようとすると、それを咎めるように肩を掴まれ、セフィロスと正面から向かい合うことになった。

「今はこれで我慢する」
「我慢…って……、…っ!」

 セフィロスは俺の後頭部に大きな手を回して固定すると、噛みつくように唇を塞いできた。
 抵抗しようとしたけど、後頭部に回されなかったもう片方の腕で腰を抱えるようにされて、二人の距離が縮まっているせいで、もがくこともできない。
 歯列を割って滑り込んできたセフィロスの舌は、俺の舌を絡め取り、まるで口中の隅々まで味わうかのように、蠢いている。
 息を継ぐように唇を開くと、さらに奥を嬲られる。深く激しい口づけに、意識がぼんやりしてきて、足の力が抜けていく。セフィロスの背中に腕を回して、しがみつくようにシャツを握りしめた。

「……んん……っ」

 ぴちゃぴちゃと水の絡む音が耳に聞こえ始めて、口の端からは飲みきれない唾液が零れ落ちていく。
 このままじゃ、崩れちゃうかも……。
 そう頭をよぎった瞬間、おとうさーん、とセフィロスを呼ぶ声が聞こえた。
 これで解放してもらえるだろう、と安心したのが間違いだった。
 急に舌先を強く吸われて、俺は腰から砕けてしまった。
 とっさにセフィロスが支えてくれたおかげで、崩れきっちゃうことはなかったけど、足に力が入らない。

「…セフィ……、やりすぎだろ…?」
「…軽く済ませてやったのに…」
「どこが軽くだよ…、もう」

 俺がセフィロスのキスに弱いことを承知の上での行為だから、たちが悪い。
 いつものことだけど、もうちょっと考えてくれてもいいと思う。流される俺も悪いんだろうけどな。
 口元を拭っていると、おとうさーん、おとうさーん、と何度も呼ぶ声が聞こえてきた。

「おとうさん、クレフが呼んでるみたいだよ。行ってあげて」
「残りは後でいただくからな」
「…俺は酒の肴にはなりませんって」
「クラウドがいれば、酒も酒の肴もいらない」
「ん?」
「クラウドを抱いてるだけで、酔えるだろ?」

 ……な、なんてことを言い出すんだよ! 俺にセフィロスを酔わせるほどの魅力があるわけがないだろうに。今すぐ穴を掘って隠れたいぐらいだよ。
 そんな恥ずかしさゆえに、憎まれ口をたたいてしまう。

「……おやじくさいセリフ…」
「どうとでも言ってろ」

 セフィロスはキッチンを出ていくと、クレフがいるであろうリビングへと向かった。
 あー、アマデウスの下敷きかー、と声が聞こえる。
 また、クレフはアマデウスと遊んで、下敷きになってしまったらしい。セフィロスの身長ほどあるテディベアにのしかかられては、苦しくてしょうがないだろう。
 おとうさん、ありがとうー、とか、おとうさんも一緒に遊ぼうとかクレフの楽しそうな声がしているので、セフィロスは鍋が出来上がるまで拘束されるだろう。
 その間にさっさと準備をしてしまおうと、食材を切っていると、ねぎ、と呟く声がした。

「ん?」
「お父さん、ねぎ、ダメだよね?」

 振り返ってみると、カインが白ネギを手にして、さっきセフィロスがしていたように、じっと眺めている。

「鍋に入れるわけじゃないから、大丈夫だ」
「ふーん、俺、おなかすいた」
「あと少しでできるから、お父さんとクレフのところで一緒に遊んで待っててくれ」
「わかった」

 カインは頷くと、キッチンを出ていった。
 ほどなくして、お兄ちゃんも一緒にゲームしよう、ゲーム、というクレフの声が聞こえてきたので、どうやら三人でゲームをすることにしたらしい。
 すぐに子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。お父さん、へたくそー、とセフィロスがなじられているのを聞いて、一人苦笑してしまった。セフィロスに『へたくそ』って言い切れる神羅の社員はいないだろう。
BACK