ホットココア
ホットココア

「クラウド。用意が出来たから、移動するぞ」
「…あ、あの…、でも……」
「何だ?」
「俺に近づいたら……、うつる……かも……」
「ああ、そうそうにはうつらない。気にすることはない」

 俺はクラウドを横抱きにすると、寝室へと運んで、ベッドに下ろした。
 クラウドは目に涙を溜めて、俺を見つめている。きっと熱が高いせいで瞳が潤んでしまうのだろう。

「もう、どこにも行かないから安心しろ。エアリスが、卵酒とホットココアを作ってくれた。どちらか、飲むか?」
「……ホットココア……」

 水筒からコップに半分ほど入れて、クラウドに渡す。クラウドはふーふーしながら、中身を冷まして、ゆっくりと飲んでいる。

「ごめん……」

 クラウドはコップを握り締めて、小さく呟いた。

「謝ることはない。何も気にしなくていいし、気を遣わなくていい。他に俺にして欲しいことはないか?」
「……さっきの言葉……、信用していいか……?」

 クラウドは俯いていて、表情は見えない。

「さっきの言葉?」
「……うつらない…って……」
「ああ、簡単にうつるような身体には出来てないからな。信用していい」
「……じゃあ、一緒に…寝て……」

 俺はクラウドの頭を軽く撫でると、握り締めていたコップを回収した。

「…セフィ……、あの……」

 俺が何も言わないのが不安なのか、クラウドは俺の顔を見上げている。

「ほら、着替えなくていいなら、横になれ。ちゃんと、隣に入ってやるから」

 クラウドは嬉しそうににっこりと笑うと、ころりと横になった。その横に入って、寒くないようにちゃんと布団を掛けてやってから、クラウドをぎゅっと抱きしめる。

「セ、セフィ……っ」
「うつらない。何も考えずに寝ろ」
「……ありがと」

 クラウドは俺の身体に擦り寄ると、俺の腕にしっかりとしがみついてきた。静かな部屋にクラウドの苦しそうな呼吸の音だけが響く。
 変わってやれればいいんだが、こればかりはなかなか難しい。
 チラッと表情を伺ってみるが、やはり呼吸しづらいのか、唇はうすく開いている。その唇から漏れる息が、何故だか俺を煽ってくる。熱のせいか血のように紅く染まった唇は、いつもにまして艶っぽく見えた。
 病人相手に、全く俺もどうかしている。

「……ごめん……」
「何が?」
「我慢……してるだろ……?」

 クラウドがくすり、と笑う。苦しいよ、とクラウドは身体を捩らせた。
 俺はいつの間にか抱きしめる腕に力をこめていたらしい。悪かった、と一言詫びてから、クラウドの首筋に吸い付いて、赤い花を咲かせる。

「……あ…っ」

と、クラウドが零す小さな息に理性のタガが外れそうになるのを、何とか抑えた。

「今日はこれで我慢してやる。だから、早く治して、もっと声を聞かせてくれ」
「…バ、バカっ!」
「わかってただろ?」
「……ん、そういうとこも……好き……」

 クラウドは小さく消え入りそうな声で言うと、もう一度俺に引っ付いてきて、そのまま眠ってしまった。

「…早くよくなれ…」

 呪文のように呟いて、少しピンク色に染まっている頬に口付けた。
短いですがお付き合いありがとうございました!
風邪ネタが書きたかったというよりは、添い寝が書きたかったという…(苦笑)。
体調悪いと甘えたくなりますしね、その感じが出てればいいかなぁ、と思っております。
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