ホットココア
ホットココア

 玄関の扉を開けると、たたきには子供たちの靴が二足、そして、クラウドのものとは違う男性物の靴が一足、女性物の靴が一足置かれていた。
 自分の家とは違う家に帰ってきたみたいな違和感を覚えながら、ただいま、と声をかける。
 靴を脱いで足を上げようと玄関マットに目を落とすと、紙が一枚置かれていた。

『リビング、ウータイの間への立ち入りを禁止する』

 紙にはこう書かれていたが、誰が書いたものなのか、なぜ立ち入り禁止なのか心当たりは全くなかった。
 紙を握って、キッチンに向かう。キッチンの方からは話し声が聞こえてきた。
 誰かいるらしい。
 もちろん、玄関で見た靴の数で言うと、少なくとも4人はいることになるわけだ。
 扉を開けて、中を覗いてみる。

「あ、おかえりなさい、あのね、あのね」

 いち早く俺の存在に気づいたクレフが、足元に駆け寄ってきた。

「ただいま。どうした? 何かあったのか?」
「クラウドが倒れた」

 クレフより先に事情を述べたのは、ザックスだった。いつも我が家でご飯を食べるときのザックス指定席に座っていて、すでに酒も入っているようだ。

「倒れた?」
「今、ウータイの間で寝てる。だから、立ち入り禁止。リビングもウータイの間と繋がってるから、ダメ」

 テーブルの俺の定位置に、酒の肴を数種類並べながら、エアリスはそう告げてきた。

「寝てる? 寝ていれば大丈夫なのか? クラウドは一体……?」
「お熱が出てるんだって」

 クレフは椅子に座った俺の膝の上に上がってきて、ちょこんと座った。クレフは俺の膝の上がなぜかお気に入りのようで、よくこうやって乗ってくる。別に構ってやったりしないのだが、気にならないようで、本人は俺の膝の上で絵を描いたり本を読んだりしていることが多い。

「熱? 風邪でもこじらせたのか?」
「風邪だと思う。ちょっと熱が高いみたい。私が来たときはソファーでぐったりしてたから、慌てて寝かせたんだけど」

 エアリスはウータイ酒の徳利とお猪口をテーブルの上に並べた。

「…そうか、世話になったな」

 徳利に手を伸ばそうとした手を、ザックスにぺちっと叩かれて、横取りされる。代わりにお猪口を渡されて、なみなみと注がれた。
 燗された酒は香りが強くて、鼻にツンと抜ける。クセのある香りだが、寒い時期は燗もいいものだ。
 ただ、膝の上にいたクレフにはよろしくなかったようで、さっさとカインの側に逃げていった。
 カインと二人であの匂いはだめだ、と真剣に話している。この美味さがわかるにはまだまだ時間がかかるようだ。

「おチビちゃんたちは、もう、寝たほうがいいわね。静かにお部屋に行ってね」
「はーい、お休みなさーい」

 カインとクレフは口々にそう言うと、キッチンから出て行った。

「悪かったな、ザックスも」

 ご返杯と言って、ザックスのお猪口に酒を注ぐ。

「何の。エアリス連れて帰らないとな」

 くーっとザックスは一気にお猪口を空にする。いい飲みっぷりだが、ちゃんと帰れるのだろうか、と不安になったところで、エアリスがザックスのお猪口を取り上げた。

「ああっ! 何すんだよ!」
「帰りに事故はごめんですから! 代わりに温かいお茶を差し上げます」

 湯飲みを差し出されて、ザックスはちぇっと、つまらなさそうに言ったが、温かい湯のみを握って、ほっとしたのか、ニコニコしている。

「セフィロスにはこれ」

 エアリスは魔法瓶の水筒を二つ並べた。
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