キスの日 (2)
キスの日


 ◇◆◇

 お湯の跳ねる音。
 自分の甘ったるい声。
 別に聞きたいと思っているわけではないけど、浴室に反響して、俺の耳を犯していく。
 そんな音の中に混じってかすかに聞こえるセフィロスのくぐもった笑い声。

「…笑う…なって…っ!」
「仕方ないだろう? 可愛いのが悪い」

 俺はこんな姿が可愛いとは思ったことないし、声だって聞きたいわけじゃない。
 だけど、この男はさっきから、俺の胸ばっかり愛撫してくる。俺自身も自覚はしている、胸が感じやすいことぐらいは。でも、感じやすくしたのは、ここで俺の腰をしっかりと抱えて、胸を舐めあげてくる男のせいだ。

「…何で…俺の…、せいに…、やぁ…っ!」

 乳首を強く吸われて、俺は身体を大きく揺らす。そのせいでお湯が跳ねて、ぱしゃんと水音が響く。それがまた恥ずかしい。
 湯船の中で足を伸ばすセフィロスの上に座らされて、胸を弄られ始めてからどれぐらい経つんだろう。ほんの数分なのか、数十分経っているのか、俺にはわからない。時間の感覚が薄れている。
 湯船の中だから、浮遊感も相まって、時間どころか現実感さえ薄れていく。

「クラウド」
「え?」

 急に名前を呼ばれて、俺は現実に引き戻される。視線を向けた先でセフィロスは悲痛そうな顔をしていた。
 さっきまで笑ったりしながら、楽しんでなかったっけ?

「…セフィロス…?」
「…消えるなよ…」
「な、何、急に。消えるわけないだろう?」

 何で俺が消えるとか、そんなことを思ったんだろう。しっかり抱きつかれてて、消えようもないと思うんだけど。

「どこにも行くな…」
「どうした? 急に不安なんか募らせて…。今の今までアンタが楽しんでたはずだろう?」

 セフィロスの頬を両手で包むように触れる。セフィロスは何も言わないまま、俺の目を見つめてくる。

「もう! 俺を抱きながら何か考えてるとか、どういう神経?」
「…何かを考えていたわけじゃない。この手の中にいるクラウドが儚く見えて、消えてしまいそうな気がした…」

 俺にはよくわからない感覚だけれど、セフィロスがそう思ったのは事実なのだろう。

「全く。冷静に俺を観察してる場合か。アンタも気持ち良くなった方がいい」
「…っ!」

 セフィロスの弱点でもある脇腹をさらりと撫でてから、俺は少し腰を浮かせた。セフィロスのモノを片手で軽く支えて、その上にゆっくりと腰を下ろす。

「…あ…っ!」

 先が少し入ってきただけで、声が漏れる。感じやすくなってしまった身体を今更どうこうすることもできない。ゆっくり腰を下ろしていくことで内壁を擦られて、快感が徐々に湧き上がってくる。それさえもじれったくなった俺は、一気に腰を落とした。その勢いに強烈な快感が身体を駆け上がり、俺は高い声を上げて、身体をのけぞらせた。
 とっさにセフィロスが俺の腰を引き寄せたので、俺の身体はセフィロスの方に倒れ込み、抱きかかえられる。

「無茶をする…」
「…アンタが胸ばっかり触って焦らすし…、その間…、ろくなこと…考えてないし…」
「悪かった」
「…ああっ!」

 セフィロスは謝ったかと思ったら、下から急に突き上げてきた。

「え…っ、ああ…っ、、や…だぁ…っ!」

 腰を揺らされながら、乳首の先を指先で弄られる。同時に弱いところを責め立てられたら、もう、声なんて抑えられない。反響する自分の声が余計に卑猥に聞こえて、羞恥心が煽られる。それなのに、その羞恥心を捨ててもいいぐらいに、セフィロスを感じたかった。
 下腹に力を入れると、咥え込んでいるセフィロスの質量が増し、脈打つのが感じられる。内側は熱くて溶けてしまいそう。溶けて一つになってしまえるのならそれでもいい。

「…っ、クラウド…っ」

 返事をせずに、セフィロスの上で腰を踊らせる。セフィロスの切っ先が奥に何度も当たり、そのたびに、快感の波が襲ってくる。それに加えて、セフィロスは俺の胸に吸い付いては、胸の突起を舌先で嬲ってくるから、胸からも刺激を受けて、快感が増幅されていく。

「…ああ…、もう、どう…しよう…」
「…何が?」
「…もっと、感じてたいのに…っ!」

 俺はもう限界らしい。俺のモノは昂ぶって、張り詰めてしまっているのがありありとわかる。

「朝まではまだ長い」

 セフィロスは耳たぶを嬲るように囁くと、急に腰を激しく動かし始めた。自分で動いていた時よりも、狙ったように奥を何度も責められて、すぐに俺はひときわ高い声を響かせながら、自分の熱をほとばしらせた。
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