特効薬 (2)
特効薬

 俺はセフィロスに近寄ると、セフィロスの手を握った。普段、そんなに手が暖かくないセフィロスにしては珍しく、触って暖かいと感じるぐらいの温度だった。俺に手を握られたセフィロスは、いきなりのことに驚いたのか、俺の顔を見てきた。その目は、いつものような鋭さはなく、どこかぼんやりとしたような、うつろな感じ。

「セフィロス…?」
「……ん……?」

 ああ、反応が鈍い。これは確定だな。
 念のため、セフィロスの額に手の平を当ててみる。
 俺は大きくため息をついた。

「セフィロスってば、すごい熱があるよ」
「…熱…? 熱があるのは当たり前の話だろう? なければ死んでいる…」
「なに、子供のへりくつみたいなこと言ってんの? 早くベッドに入らないと…」
「そういう…ものなのか…?」
「俺が熱を出したときは、すぐに見抜いたくせに、何で自分の時は気づかないんだよ!」

 セフィロスがゆっくり首をかしげているのを見ると、何だか風邪以外のすごい病気の気がしてしまった。
 セフィロスの手を引っ張って、寝室まで連れて行く。

「さっさと着替えて、ベッドに入って! 俺、薬取ってくるから」
「…わかった……」

 セフィロスは上着をゆっくり脱ぎ始めた。それを見届けてから、階下へ駆け下りる。
 薬と、洗面器、氷、タオルなど必要そうなものを全部用意して寝室へと戻ると、セフィロスはベッドに入って目を閉じていた。

「セフィロス…、大丈夫…?」
「…身体がすごくだるい…」
「そりゃ、そうだよ。すごい熱だもん。ここまで我慢しなくってもいいだろうに」

 俺は冷たくぬらしたタオルをセフィロスの額においた。少し落ち着いたような顔をしたので、俺はほっとした。

「…クラウド…」
「何?」
「…俺は…もう…だめなんだろうか……」
「は?」

 何だろう、この弱気っぷりは。
 日ごろ、モンスターと戦っていて、瀕死の重傷なんてことは今までに何度となくあった。そのたびに、俺は心配していたけど、当の本人は全然気にしていなくて、あっさりと回復しちゃったりしてる。
 そんな人が風邪の熱で、死ぬ心配してるって……。

「…何だか、意識がなくなっていくような気がする……」
「今、身体が風邪と戦ってるんだよ。寝ている間にきっと治るよ」
「…二度と…目覚めなかったら……?」
「ありえないよ、ちゃんと起こしてあげる。心配で眠れない?」
「…いや……別に……」

 言葉を濁すような言い方をするときは、自分の気持ちがはっきりしていない証拠だ。不安や心配するようなことがないときは、自分の弱さを見せるような言葉をセフィロスは言わない。

「普段、甘えないんだからさ、こういう甘えられるチャンスは自分で捨てない方がいいよ」

 俺はベッドの側に椅子を持ってきて腰を下ろした。ベッドの中のセフィロスの手を両手で握り締める。

「これで眠れそう? それとも添い寝しようか?」
「…バカ…言うな…。お前に…風邪がうつったら…困る…」

 俺の手を振りほどこうとするセフィロスの動きを抑えこんで、さらに強くセフィロスの手を握った。

「不安になってるくせに、強がらなくてもいいだろ? 俺はセフィロスのことが心配だからここにいるわけだし、セフィロスの不安を取り除けるのは今のところ俺だけ。だから、こうやって手を握ってる。セフィロスが安心して眠れるように」
「……逆にお前が…風邪…ひくなよ……」

 俺に少しだけ笑ってみせたセフィロスを見て、大丈夫だな、と安心できた。

「うん、ありがとう。でも、俺の心配はしなくて平気。セフィロスはゆっくり眠って、早く治すことだけ考えてればいいよ」

 俺は少し身体を移動させて、セフィロスの頬に口付けた。

「早く治るようにおまじない」
「…すまない……」

 セフィロスはそれだけ呟くと、そのまますーっと眠ってしまった。
 外傷には強いけど、内側の不調には弱いんだなぁ。風邪ぐらいであんなに弱気になっちゃって、何だかギャップが激しくておかしい。
 こんな姿、この先見れないかもしれないので、貴重な体験をした感じ。
 でも、俺は、やっぱり普段の勝ち誇ったような強気なセフィロスが好きだな。

「…明日には治ってますように…」





「…クラウド、大丈夫か?」
「…ん…?」

 誰かに呼ばれてる声で目が覚めた。
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