silent night
silent night
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 冬の夜は好き。
 静かで澄んでて、きんと冷えたあの感じがいい。

 でも、嫌いだ。
 深くて暗い闇が続きそうな気がするから。

 特にあの人の帰りを待っている場合はそう思う。
 このままあの人も帰って来ないで、夜も明けないような気が。


 日付が変わってもまだ帰って来ていない。
 もちろん、久々に出勤したから、接待やらお誘いやらあったかも知れない。
 ただ、そういう時はメールが届いたりするのだが、今日は届いていない。
 酔っ払うことができない人だから、飲み過ぎで倒れてるということはあり得ない。


 帰ってくるだろうか  


 そんな不安が心をよぎる。


 自分のことをひどく疎ましいと感じてしまう日があると言っていた。

 自分の存在を消すことにためらいがないあの人は。

 いとも簡単に姿を消してしまいそうで。


 ダイニングテーブルに突っ伏して時計の秒針がただ規則的に動いているのを見つめていた。

 不意に玄関の扉を開く音がした。
 それはいつもに比べて静かで、閉じる音も微かにしか聞こえなかった。

 きっと、自分を消すことだけを考えているのだろう。

 だけど、無意識でもここに帰ってきてくれてるということは、俺のことを思ってくれているのだと思う。

 俺はリビングの扉を開いた。

 ソファーに座ったままのその人は動きもしない。
 その隣に座って、手を握る。
 これで反応するような人じゃない。
 それは承知の上で、俺が側に繋いでおくための行為だ。
 次に動いた時、消えてしまわないように  


 物音一つしない部屋で俺は黙って座っていることしかできなかった。
 この状態になったら、外部からのどんな干渉も拒まれる。
 だから、俺はただこうして隣で側に戻ってくることを待つしかない。
 どれだけの時間が流れても  

 でも、俺は待てる。
 それはこの人が好きだからだ。
 長いさらさらの銀髪も、驚くほど長いまつげも、今こうして握りしめている大きな手も。
 それだけじゃない。
 言葉にしつくすことが出来ないぐらいに好きなところがあって、この人を構成するもの全てが愛おしい。

 だから、帰ってきてほしい。


「クラウド」


 小さい声だった。
 でも、確かに聞こえた。

「お帰りなさい」

 ぎゅっと手を握りしめる。
 その手を握り返してくれただけで、俺は本当に幸せだった。

 この人がまだ俺の側にいることを選んでくれたんだ、俺はまだこの人に触れていられるのだ、と思うと嬉しくて涙が零れた。
 喜びと幸せをありったけ詰め込んで、俺は震える声で呟いた。

「……セフィロス……、愛してるよ……」


END
ふと寒い日に思いついた内容です。
ラブラブ色は濃くないです。すみません。
みことの中ではセフィロスは一人考え込んじゃいそうな、思いつめてしまうような面があると思っているのでこういう内容になりました。
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